輝線星のバルマー逓減率測光サーベイシステムの構築
大島 修(岡山県立鴨方高等学校)
6 度の視野角を持つカメラで、HαとHβ 輝線の強度を測光する全自動サーベイプロジェクトを進めている。主な観測目的は、9 等より明るい輝線星のバルマー逓減率D34 ≡ F(Hα)/F (Hβ) を測光的に求めること、およびその時間変動を知ることである。掃天範囲は赤緯-30 度以北で、1 度以内の重なりを持った1667 枚の天域フレームに収める。
フリクションドライブによるロボット赤道儀に、Rc、Hα、V 、Hβ の4 種のフィルターを装着したCCD カメラを同架する。フラットフィールドを得るために、光源に白色LED を使った新しく開発した積分球を用いる。CCD のピクセル20μm に対し、レンズの焦点距離100mm というアンダーサンプリング問題は、露出中にカメラごと動かし星像を増大させる方法により測光精度を向上させる。輝線強度を求めるために必要な連続光成分は、分光標準星のRc とV バンドの値から推定、または恒星カタログのスペクトル型からモデル計算した値を使いる。
自動天候判断は、新規開発したペルチエ素子を使った晴天検出器及び雨滴センサー・気象モニターからのデータを、観測マネージメントソフトが行う。サーバ上では、自動でフレームを測光し、結果は恒星ごとにMySQLを使ったデータベースに収める。これらのシステムを制御するソフトは、オブジェクト指向言語Ruby をLinux上で用い、速度を要求される部分にはC++のクラスライブラリをRuby の拡張ライブラリとして取り込む。
サーベイ結果のRc とV バンド及びHα・Hβ 強度のデータベースはWeb 上で逐次公開する。輝線星だけでなく突発天体や各種変光星の有用なデータベースとなることも期待している。
この計画は、当初 H15年度科学研究費補助金(奨励研究)課題研究番号15916026によって始められた。その計画に対し、Hβを加えたバルマー逓減率を測光的に測定するものにするとなお有意義であるとの助言をいただき、さらに研究費の一部支援までしてくださっている小暮智一先生に感謝いたします。